ぼくの生まれた日

吸い込まれそうに青い空でした。

「ぼくが生まれてくるとき、どんなだったの?」半身を起こしただいすけくんが、私の視界いっぱいに顔を近づけて言いました。

「たいへんだったんだよ。みんな、大忙しだった」「大忙しだったの?ぼくのお父さんと、お母さん?」

「君のお父さんとお母さんも大忙しだった。けれど、ほかのみんなが、もっと、もっと大忙しだったんだよ」

「お父さんとお母さんだけとちがうの?」

「君のお父さんとお母さんの大忙しは、みんなに頼んでまわることだったんだ」

「頼んでまわったの?」

「頼んでまわったさ。お父さんとお母さんのところに、赤ちゃんが生まれてきます。

どうか、仲良ししてやってくださいって、みんなに頼んでまわったさ」

「みんなに?」

「みんなにさ。君より先に生まれていたみんなにだよ」

「園長すけにも?先生にも?さっちゃんにも、ひろくんにも?」

「ああ、みんなにだ。人間だけとちがうのだよ。犬さんにも猫さんにも、雀さんにも、虫さんにも、草さんや木さんにもだ」

「象さんにも?」

「そうさ。キリンさんやカバさんやライオンさんにも頼んだのさ」

「お魚さんにも?」

「頼んださ。だいすけくんが赤ちゃんになって生まれてきます。どうか、仲良ししてやってください」

「そうしたら?」

「みんな、大忙しになった」

「みんな、大忙しになったの?」

「なった、なった。たいへんな大忙しだ。会議、会議、で大忙しだ」

「会議、会議?」

「そうさ。だって、だいすけくんがどんな赤ちゃんか解らないもん。やさしい子だったらいいけれど、先に生まれているものをいじめる子かもしれないもん。いじめられたらたいへんだ。だから、一生懸命の、大忙しの会議だった」

「それでぼく、生まれたの?」

「そうだ。みんなが、生まれてきていいよって言ってくれたんだ。この赤ちゃんは、やさしい子になってくれるだろう。生きているみんなを大切にする人間になってくれるだろう。みんな、そう思ったんだ。そう思ったから、パチパチって拍手したんだ。おめでとうって、言ったんだ」

「良かった」

だいすけくんは、頭の下に手を組んで半身を倒しました。コスモスの花が揺れ、蜂の羽音が聞こえました。

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